「安鍼」の臨床報告
臨床例 S・Sさん 52歳 男性
ストレス性疾患(抑うつ、円形脱毛症、不眠傾向)
バブル崩壊後の建設不況で、同僚が解雇される中、いつか自分もと考えると、不安で堪らない。利益率の高い建売物件が減り、その穴を埋めるために薄利な内装工事も請け負うようになった。施工数が多くなった分だけ、引き渡し期限の遅延、工事ミスなどのクレーム処理も多くなった。そうこうしているうちに、右こめかみの上に10円玉ぐらいの円形脱毛巣を見つけた。細かく調べると、その傍にも毛がまばら生えているところがある。ここも遅かれ早かれ円形脱毛になるのは間違いない。そう考えると、不安で眠れなくなる。うまく入眠しても恐ろしい夢を何度もみるし、その都度起きては又眠るということの繰り返し。2ヶ月ほど、皮膚科で処方されたステロイド剤を患部に塗ったり、抗アレルギー剤を飲んだりしたが、一向に髪の毛が生えてくる兆しはない。そこで、同僚の勧められるまま、当院の鍼灸治療を受けることになった。先ずは頭皮の血流状態を改善するために首や肩の凝りを鍼やお灸でほぐした。更に脱毛部分を取り囲むように鍼を浅く刺した。その上で、不眠対策として、安鍼の他、頭や背中、手足にある鎮静ツボに適宜鍼灸治療を施した。すると、2~3回の治療で熟睡できるようになり、1ヶ月ほどで患部に短い毛が生えてきた。発毛が確認されれば、しめたものである。その後2ヶ月ほどで円形脱毛症の悩みは解消した。