うつ病や不眠の対策

うつ病は回復するまで時間がかかります。多くのうつ病は必ず治りますので、焦らずに回復を待ちましょう。

頑固な不眠もうつ病に伴う症状です。

ストレス障害や更年期障害、自律神経失調による不眠もうつが潜んでいる可能性が高いのです

心療内科の治療法としては薬剤カウンセリング転地療法などがあります。

薬剤は症状を緩和して回復を助けますが、決定打にはならないことが多いようです。

カウンセリングはうつ病からの脱出の契機になるようです。また、認知行動療法などの自助努力も必要になります。

ご家族の皆様へ

うつ病は本人だけではなく、ご家族も計り知れないほどの心労が溜まります。

それがもとで、ご家族の方までうつ的になってしまったら、問題の解決は見いだせません。

りゅうえい先生

とは言っても、ご家族の協力も必要です。

患者さんの身になって精一杯面倒をみなければなりません。

表に見える傷もありませんし、うつ病になった明確な理由も掴めないので、健康人は往々にして気のせいと決めつけてしまうきらいがあります。

でも、病人の心はズタズタに傷つけられています。

脳血流の低下が観察されるということは、決して気のせいではなく、病気なのです。

ですから、不用意な言動は慎まなければなりません。堪忍袋の緒を切らして怒鳴ったりしては元も子もありません。深刻な事態を招いてしまう恐れがあるからです。

基本的には気長に回復するのを待つしかありません。絶えず信頼関係を構築するような気構えで接し、いつか必ず元気になってくれると信じて待つとよいでしょう。

気長に見守る

単なる抑うつ症状でしたら、本人の気分転換ですぐに回復することもありますが、うつ病となると、そう簡単ではありません。

一般的に一進一退を繰り返しながら徐々に治っていくものです。

うつ病は光トポグラフィーで確認できるように脳の機能低下という病気ですので、じっくり構えて対応していくのがベストです。

脳に受け入れる余裕がなければ、忠言であってもストレスに感じてしまうのです。

押し付けない

ゴロゴロしていても見守って

ですから、ストレスになるような決断を迫ったり、功を焦って命令口調であれこれ指図したりするのは逆効果になる場合があります。

ごろごろしている姿を見て、不甲斐なさを感じ腹立たしくなったとしても、気長に見守る姿勢が大切です。

とにかくゆっくり休ませ、心を開かせることが必要です。そんな環境の中でじっくり話を聞いてあげることが改善につながります。

但し、無関心では困ります。

注意深く観察する必要があります。

りゅうえい先生

事故が起きては困りますので、病人に気づかれないようにさり気なく行動や薬の管理するようにしてください。

その他、自分自身の精神衛生にも注意が必要です。看護している方が心身の疲労からうつ病になってしまったら共倒れです。

気分転換をはかり、ストレスを溜めないようにしてください。

言ってはならない言葉・言ってもいい言葉

基本的にうつ病になりやすい方は、真面目な性格の持ち主の場合が多いようです。

他人の言葉も真剣に受け止め、一生懸命対応しようとしますので、頭がフル回転です。

絶えず脳がピーンと張っていますので、疲労が溜まる一方です。

そのような方がうつ病になると、正常な脳の機能が保てなくなり、自分の行動や言葉に自信が持てなくなってしまいます。

外に出て人に会うのも不安になり、人の言葉を聞いても重く考えてしまいます。

その結果、自分を卑下したり自分の能力を過小評価したりして、自己嫌悪に陥ってしまいます。

ですから、

  • 頑張ってみろ
  • 情けない
  • シッカリしろ

などいう言葉は禁物です。

また、命令口調であれこれアドバイスするのも得策ではありません。自分に自信がなくなっていますので、負担に思われることもあります。

せめて何か手伝えることはある?

ぐらいにとどめておく方が無難です。

  • おはよう
  • 今日はイイ天気だね
  • お腹空いた?

などの、日常の挨拶も基本です。この方が回復を早めることにつながる可能性が高いのです。

ひとりで悩まない

とは言っても、ご家族の心労は溜まる一方でしょう。対応に迷うこともあるでしょう。引きずられて家庭も暗くなってしまうでしょう。また、先々のことを考えると、悩みの種は尽きることはありません。毎日祈るような気持ちで回復を待つことになるでしょう。

でも、ひとりで悩む必要はありません。

専門医に相談するのも1案ですが、同じようにご家族にうつ病の方がいるご家庭は沢山ありますので、色々な知恵を寄せ合って対処することも可能です。

今はFacebookやInstagram、TwitterなどのSNSで情報交換ができます。

また、下記のリンク先に掲げたようなうつ病患者さんを支援する機関も大きな助けになるでしょう。

その他にも全国規模、または各市町村に相談ができる施設が多数あります。

自助努力は回復を後押しする

うつで悩む女性

当然、うつ病の回復には自分自身の努力も必要です。うつ病は心の風邪と言われるぐらいで、誰にでも起こり得るとともに拗らせなければ早期に治る疾患です。

抗うつ剤や入眠剤、抗不安剤などが必要な時期もありますが、根本的な治療にはなりません。逆に入眠剤や抗不安剤は依存性があるため、服用を中止するときが大変です。

昨今じっくり話を聴いた上で、ソフトにアドバイスするカウンセラーの方が役に立つかもしれません。

いずれにしろ、脳にエネルギーが溜まったところで、自分を見つめなおし、自分という人間の存在を再認識しなければなりません。

社会における自分の立場、存在意義、役割、家族や友人との関わりなど、内観しなければならないことが山ほどあります。

でも、難しいことではありません。どれも紐づけされていますので、ひとつ理解できれば次々と解決していきます。余裕が出てくれば、取捨選択も可能になります。その時、何でこんなことに悩んでいたのだろうと、心が解放されます。

そこで、その助けとしてお勧めするのが、

  • 認知行動療法
  • 運動療法

です。

また、簡単な方法ですが、良かった探しも有効です。

認知行動療法とは?

認知行動療法は精神神経疾患を始め、自分の性格や行動パターンに不満や嫌悪を感じている方に適した自己改善法です。

自身の考え方や行動のとり方を変えることで、抱えているストレスやコンプレックスを解消させます。

りゅうえい先生

上手くいけば、それまで暗かった性格が一変して明るくなります。

多くの病院では臨床心理士が指導していますが、自分で行うことも可能です。

認知行動療法の科学的な裏付け

うつ病の方は、日頃右脳が優位になっている傾向にあります。右脳の背外側前頭前野は不快や悲観予測をする脳領域です。

ですから、何か事が起きると、不安感や悲観が先に立ってしまう方に多いのです。

逆に左脳の背外側前頭前野は快予測をします。先ずは楽しい予感をしてしまう方です。

これはMRIなどの検査で判明しています。

当初は右背外側前頭前野が優位であっても認知行動療法により、左背外側前頭前野が活性化することがあります。

それに伴いうつ症状も改善する傾向にあります。

認知行動療法の例

例えば、

10時に待ち合わせの約束

10時になっても相手が来ない

相手に電話する

電話にでない

そこで・・・

↓             ↓

嫌われたと思い意気消沈して諦めて帰る。

交通機関の遅れ、移動中と考え、待つ。

この例は極端ですが、ある事象に対して、個々により思ったり考えたりすることが異なります。

嫌われたというマイナスの認知をしてクヨクヨしながら帰宅する人もいれば、そうでない人もいます。認知次第で、感情も行動も変わります。後ろ向きな認知を前向きな認知に変えることで冷静な判断がつき、的確な行動がとれます。

したがって、認知を是正することで行動までも変化させようとするのが、認知行動療法なのです。

認知行動療法の実際

自分で認知行動療法を行う場合は、まずは脳にエネルギーが蓄えられた状態、つまりある程度冷静に物事の判断がつくようになってから行うのがベストです。

自分を脳のエネルギーレベルの低下が続き、自己を卑下し、嫌悪感に苛まれているときは、いくら認知行動療法を実践しようとしても、まとまりがつかず途中で断念してしまう可能性が高いのです。

したがって、自分を見つめなおすことができるようになってから行うと功を奏します。

例えば、

嫌われたと思い意気消沈して諦めて帰った。
でも、急用で行けなくなった、ゴメンというメールが入っていた

その時の気持ちは?

不安、自責、自己嫌悪、悲観、後悔

その時、何を考えたか?

不安 → 嫌われてしまったのに違いない
自責 → 無理な約束をしてしまった自分が悪い
自己嫌悪 → こうなったのは自分勝手な性格がだからだ
悲観、→ これからは会う機会はない

その考えは合理的か?反証はないか?

  • 嫌われてしまったのに違いない 
    長い付き合いなので、そう簡単には嫌われないはず
  • 無理な約束をしてしまった自分が悪い 
    お互いで決めたのだから、無理とは思えない
  • こうなったのは自分勝手な性格がだからだ 
    いつも相手の意見を尊重しているはず
  • これからは会う機会はない 
    相手が急用だったから仕方ない、また誘えばよい

このような順序で心の負担となっていることを考え直してみます。

反証が思いつくようになれば、ネガティブな考え方が薄れ、冷静に客観的な物事の見かたができるようになります。

ここまで来れば、うつ病の解消は間近です。

右脳ばかり使うのではなく、臨機応変に左脳の機能を利用できれば、毎日の生活が豊かになります。

運動療法

運動療法

うつ病の改善運動が役立つということは古くから知られていました。

東洋医学では気の流れが停滞することにより抑うつ状態になるとされ、外に出て自然の中を歩くことを勧めています。

少し早歩きすると、汗ばんだり呼吸が早くなったり、心拍数が増加したりしますが、これが良い結果を生むようです。

恐らく交感神経の興奮からヤル気ホルモンのアドレナリンやドーパミンの分泌が高まるからでしょう。ストレスが元のアドレナリンでは、抗ストレスホルモンの分泌を誘発してうつを悪化させてしまいますが、運動では、終わって暫く経つと、セロトニンの分泌も増えるようです。

温泉に入って直ぐは交感神経系が優位になりますが、次第に爽快感が生まれます。

りゅうえい先生

どこか似ていませんか?

温泉は気持ちの良いものです。ウォーキングも続けているうちに病みつきになるようです。

ですから、楽しく歩くようにすべきです。そのためには気持ちが乗った時に行うのが一番です。回数もそれほど多くなくても構いません。

研究者によると、1週間に2度30分以上早足で歩けば効果が出るとのことです。

空腹時のウォーキングは更に効果的で、五感が研ぎ澄まされたように感じるそうです。

良かった探し

ウーパールーパー

水族館のウーパールーパーを観察したら、数年来のうつ病から立ち直ったという方がいました。なぜ、ウーパールーパーが抗うつ剤より効いたのか、それを検証してみます。

人間は様々なストレスを感じて生きています。生活をしていると、大なり小なり誰でも嫌な経験を味わいます。

ただ、感じ方は個々により異なります。聞き流すことが出来る人もいれば、深刻に受け止めてしまう人もいます。場合によってはトラウマとなり脳裏にこびりついてしまう場合もあります。ただし、このような感受性の高い方が異常な精神構造かと言えば、決してそんなことありません。

りゅうえい先生

性分に近いもの、個性とも言えるからです。

この問題にどう対処すれば良いのかと言うと、性分は変えられないのだから自分の生き方を尊重しつつ、他人との協調を模索するしかありません。

これは当然のこと、世の中は自分だけで成り立っているわけではなく、集団で構成されているからです。

だから、仕事でも何でも妥協が必要なのです。

これについては先刻ご承知の方が多いでしょうし、そのように生きてきたはずです。では、何故行き詰まるのかと言うと、自分の生き方が全うできていることに気付かない、だから喜べないのでしょう。それがストレスとして積もり積もってしまうのではないでしょうか。

人間、心のおもむくままに生きていかないとストレスが溜まってしまいます。その自由な行動に文句を言われると、更にストレスが溜まってしまうでしょう。

自分の生き方を否定されることに堪えられないからです。多分、相手が忠言を言ったとしても、意に反すれば納得できなでしょう。

そこで考え直してみます。普段の生活において、

  • 殆ど自分の生き方を実践できているのではないか
  • 一番大切な自由は謳歌できているのではないか
  • たとえ周囲の者に注意されても怒られても、自分の生き方はしっかり守っている。

それが最低限維持できていれば、あとは妥協すべきでしょう。

りゅうえい先生

自分の生き方が全うできていることに気付き喜べれば、軽く聞き流すことができるのでは!?

仕事も自分のペースが守られていれば、何を言われても過剰に反応することはなく、淡々と受け流せば良いのではないのでは!?

これが、自分の生き方を尊重して、社会という集団の中で生きていくための妥協なのです。

つまり、究極の良かった探しをすることです。

何よりも自由が守られていること。何を言われても自分のペースが維持されていることに感謝すべきなのです!

水族館の人気者のウーパールーパーは狭い水槽の中で死ぬまで過ごします。自然の中で生きていれば、捕食するのも大変でしょう。それどころか食べられてしまう恐れもあります。

それに引き換え、水族館は天国です。餌をもらえるから自然の中よりも幸せでしょう。でも、それは人間の立場からの考えで、ウーパールーパーに言わせれば、過酷な生活環境であっても自由の身の方が良いと思うかもしれません。

飼いならした鳥でもサルでも、解き放せば戻ってくることは稀です。

その人は女性で、ウーパーがあまりにも不細工でグロテスク、でも、愛嬌があり、優しげな顔、思わず吹き出してしまったそうです。

ウーパールーパーより、今の自分の方が幸せと思えば、少なからずもうつを解決する糸口が見つかるかもしれません。

忘れないように文章で残しておくと更に効果的です。

不眠の解消は絶対条件

うつ病は遺伝的な素因やストレスに対する感受性が高い性格が発症の大きなウエートを占めていますが、

  • 自律神経失調症
  • パニック障害
  • 神経症等

といった精神神経疾患によって生じるものや、

  • イジメ
  • 死別
  • 難病

などによる強烈なストレスに起因するもの、

  • 季節
  • 生体リズム

等の身体の内部の変調によって生じるもがあります。

うつ病になると、多くの方は寝つきが悪くなったり、場合によっては途中覚醒をともなう不眠を訴えるようになったりします。

うつは頑固な不眠をもたらす

不眠症で眠れない人

確かにうつ病の患者さんの多くは、

患者さん

朝までグッスリ眠りたい!

患者さん

眠れないから余計気分が悪くなる!

患者さん

夜眠れないのが一番つらい!

と言っています。

厚労省の発表によると、うつ病の患者さんが不眠を併発する確率は90%に及ぶとのことです。このように、うつ病と不眠は深い関係があるのです。

日中、鬱々とした気分に悩まされ、その上眠ってもすぐに目がさめてしまい、あとは眠っているのか、起きているのか、よくわからないという状態が長く続けば、とても脳の疲労を取ることはできません。

悶々とした気分で朝になってしまえば、うつ病が悪化するのは当然です。少なくとも改善は望めないでしょう。

睡眠に関わる重要なホルモンは多数知られていますが、その中でもメラトニンというホルモンが関係していると言われています。

メラトニンは脳の松果体から分泌されるホルモンで、概日リズムや睡眠リズムと深く関わっています。

血中濃度が適正でないと、昼と夜の感覚が逆転したり、深い睡眠状態であるノンレム睡眠が浅くなったりします。

こうなると、昼間眠く夜目がさえてしまうという夜型人間になってしまったり、眠りについても、何度も目が醒めてしまうという睡眠障害があらわれたりします。

メラトニンの分泌が変化してしまう原因として、

  • 加齢
  • 不規則な生活
  • ストレス

等が挙げられますが、脳内の伝達ホルモンであるセロトニン不足も大いに考えられます。

考え事があると、なかなか寝付けません。それが長期に解決不可能になると、大きなストレスとなり、頑固な不眠症を発生させてしまいます。

それどころか副腎皮質ホルモン(コルチゾ-ル)の分泌を高め、不眠スパイラルを招いてしまいます。

当然、脳を休めることが困難になり、うつ病からの脱失も難しくなります。

うつ病は不眠の解消が大切

ストレスがかかると、視床下部から副腎皮質刺激誘発ホルモン(CRH)が分泌が高まり、それを受けた脳下垂体は副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を血中に放出させます。これが副腎皮質を興奮させ、コルチゾ-ルの分泌を促進します。

コルチゾ-ルはストレスホルモンとも呼ばれ、ストレスから発生する身体の障害を軽減させることができます。ところが、ストレスが長期的になると、コルチゾ-ルの過剰な分泌が続き、交感神経系の興奮状態が持続されます。すると、動悸やのぼせ、発汗などの自律神経失調症状のみならず、覚醒レベルも亢進し不眠を悪化させてしまいます。

特徴的な不眠症状としては、

  • 寝つけない
  • 寝ついても何度も目が覚めてしまう
  • 再入眠できず悶々として朝を迎えてしまう
  • 寝起きがスッキリしない

といったことが挙げられます。

このような睡眠状態は心身の疲労を蓄積させるので、うつ病になると午前中症状のピークがみられます。また、このような疲労はうつ病を発症しやすいとも言えます。脳や体の負担が解消できないからです、

したがって、うつを回復させるにも、うつを予防するにも、充実した睡眠を維持することが重要なのです

不眠を解消するには?

りゅうえい先生

では、うつ病による不眠を改善するにはどうしたらいいでしょうか。

その答えは当たり前なことですが、うつと不眠の対策を同時に行えば良いのです。心療内科でも、抗うつ剤と睡眠導入剤を同時に処方していますので、間違いありません。

但し、薬剤は大なり小なり副作用を伴いますので、積極的には勧められません。基本は薬剤以外の方法を選択すべきです。

特に睡眠導入剤は急にやめると、全く眠れなくなるといった反跳不眠現象があらわれます。また、飲まなければ眠れないという強迫観念を持つこともあります。一般的な ベンゾジアゼピン系の入眠剤を長期に服用すると認知症の恐れが高まるとの指摘もあります。

そこで、ご自分でできる簡単な不眠対策は、朝太陽光線を目に入れることです。夜睡眠リズムを整合わせるメラトニンの分泌が高まるからです。

また、ウォーキング水泳もお勧めです。

不眠症に関して詳しく知りたい方は、下記のリンクで詳しく解説していますのでご覧ください。

不眠症に関して詳しくはコチラ>>

西洋医学による治療

抗うつ剤と精神安定剤、入眠剤

うつ病の標準的な治療としては抗うつ剤の服用が筆頭に挙げられます。

現在繫用されている薬剤は、シナプスにおけるセロトニンの効率的な利用を促進させるSSRIや、セロトニンだけではなくノルアドレナリンも含めて同じように作用するSNRIです。

通常セロトニンは情報を次のシナプスに伝達すると、元のシナプスに取り込まれ、分解・再合成されることで、新たな情報を伝達できるようにします。その際、セロトニントランスポーターと呼ばれるたんぱく質がセロトニンの取り込を促進させることが解っています。

ところが、うつ病の方の多くはセロトニンの分泌低下がみられるので、情報の伝達が十分に行われないまま元のシナプスに戻ってしまうことになります。SSRIは選択的にセロトニントランスポーターの働きを阻害し、シナプスの間隙におけるセロトニン濃度を高めることで、情報伝達を進めるという抗うつ剤です。

SNRIはセロトニンだけではなく、ノルアドレナリン濃度も高めるという作用を持っていますので、やる気も出てくると言われています。

りゅうえい先生

ところが、否定的な意見も出はじめています。

最近、専門医の間からSSRIもSNRIも画期的な効果は得られない、あるいは効き目に個人差があるといった評価がなされています。

また、副作用の少ない抗うつ剤と言われていますが、それでも副作用は伴います。SSRI食欲の変調からの体重減少や増加、男子においては性欲減退EDなどの副作用があらわれることが知られています。

また、勝手に服用を中止すると、

  • めまい
  • 耳鳴り
  • 幻聴

などの内耳の異常が起きることもあります。

SNRIはノルアドレナリンにも作用しますので、従来からある三環系や四環系の抗うつ剤に似て、

  • 口渇
  • 吐き気
  • 下痢
  • 便秘
  • 排尿障害
  • 血圧上昇
  • 頻脈

などの副作用があらわれることがあります。更にSSRIもSNRIも躁うつ病では異常な興奮の他、躁転することがありますので、注意して扱いうようにとの指導があります。

その他、併用される入眠剤の多くはベンゾジアゼピン系ですが、やめるときが一苦労とのことです。

確かに安全な入眠剤と言われていますが、急にやめると離脱症状が問題となります。

全く眠れなくなってしまう反跳不眠途中で目が覚めその後は一睡もできないとか、早期覚醒などの依存症状が出やすいのです。中には脱力感せん妄認知機能の低下などがみられる場合もあります。

りゅうえい先生

厚労省も長期投与や多剤併用を減らすように指導していますが、なかなか上手くいっていません。

これは医師サイドだけではなく、患者さんがやめられないというところにも原因があります。抗うつ剤も入眠剤も回復の助けとして短期の服用にすべきというのが大方の専門医の意見です。

いずれにしろ、絶対必要なときもありますので、専門医の指導に従うことにより、服薬におけるメリットがデメリットを上回るようにしなければなりません。

転地療法

自宅や職場から遠く離れたところに移動して療養に努めます。

これにより、

  • 死別
  • オーバーワーク
  • 転職
  • 就職

など、うつ病の発症の契機となったストレスを解消させます。大きな効果があると言われていますが、元の生活に復帰すると、抑うつ症状が再燃し、元の木阿弥になってしまうようです。

このように新たなストレスに対抗する力が養えないというデメリットもあります。

そのため、転地療法を試みた方は、それまでの生き方を変え、新たな生活を築くことが多いようです。

TMS(経頭蓋磁気刺激法)

最近、うつ病は左前頭葉の血流低下という説が主流になりつつあります。

うつ病の身体化障害と同じようにDLPFC(左背外側前頭前野)の機能障害が疑われています。

となると、うつ病は単なる気持ちの問題ではなく、脳自体の病気と言えます。

そこで、DLPFCを含む左前頭葉の血流を改善してうつ病を治すためにTMSが利用されるようになったのです。

TMSの正式名は磁気刺激治療で、磁力による血流改善が期待できるのです。

りゅうえい先生

差し詰めヒップ○○○バンの強力版になるでしょうか。

東洋医学による治療もおすすめ

西洋医学が不安なら東洋医学を試すのも、有力な手段です。抗うつ作用や精神安定作用のある漢方薬があります。

古くからうつ病や不眠症対策に用いられてきました。

漢方薬

漢方薬

漢方薬は体質や症状が合致すると優れた効果を発揮します。

下記の6つが繁用されています。各イラストの画像で、当てはまる症状が多ければ、効果がでる可能性が高くなります。

加味逍遥散 カミショウヨウサン

加味逍遥散

処方(g)

当帰3.0 芍薬3.0 白朮3.0 茯苓3.0 柴胡3.0 牡丹皮2.02.0 甘草2.0 乾生姜1.0 薄荷1.0

適応症

自律神経失調症 更年期障害 神経症 うつ病 不妊症 月経不順 月経痛 子宮内膜症 帯下 子宮・膣部糜爛 膣乾燥症 性交痛 心臓神経症 慢性肝炎 など。

図で当てはまる症状が多ければ、効果がでる可能性が高くなります。

柴胡加竜骨牡蛎湯 サイコカリュウコツボレイトウ

柴胡加竜骨牡蛎湯

処方(g)
柴胡5.0 半夏4.0 大黄1.0 茯苓3.0 桂枝3.0 黄ゴン2.5 竜骨2.5 牡蛎2.5 人参2.5 生姜2.5 大棗2.5

適応症

ノイローゼ ヒステリー 神経性 不眠 インポテンツ 更年期障害 てんかん うつ病 精神分裂病 高血圧症 動脈硬化症 脳血管障害 神経性心悸亢進症 狭心症 心臓弁膜症 慢性腎炎 など。

四逆散 シギャクサン

四逆散

処方(g)

柴胡5.0 芍薬4.0 枳実2.0 甘草1.5

適応症

胃・十二指腸潰瘍 慢性膵炎 胆石症 胆のう炎 胆のう手術後後遺症 慢性肝炎 肝硬変症 胸膜炎 急・慢性気管支炎 鼻炎 神経症 てんかん 鬱病 更年期障害 など。

図で当てはまる症状が多ければ、効果がでる可能性が高くなります。

女神散 ニョシンサン

女神散

処方(g)

当帰3.0 木香1.5 甘草1.5 川キュウ3.0 黄ゴン2.0 香附3.0 桂枝2.0 黄連1.5 檳椰2.0 白朮3.0 人参2.0 丁香1.0 大黄0.5~1.0

適応症

更年期障害 不眠 不妊症 うつ病 頭痛 メニエール病 自律神経失調症 ノイローゼ 多汗症 冷え性 など。

図で当てはまる症状が多ければ、効果がでる可能性が高くなります。

半夏厚朴湯 ハンゲコウボクトウ

半夏厚朴湯

処方(g)

半夏6.0 厚朴3.0 茯苓5.0 生姜4.0 紫蘇葉2.0

適応症

不安神経症 ヒステリー 不眠症 食道神経症(ヒステリー球) 慢性胃炎 声帯ポリープ うつ病 など。

図で当てはまる症状が多ければ、効果がでる可能性が高くなります。

抑肝散加陳皮半夏 ヨクカンサンカチンピハンゲ

抑肝散加陳皮半夏

処方(g)

当帰3.0 鈎藤3.0 川キュウ3.0 白朮4.0 茯苓4.0 柴胡2.0 甘草1.5 陳皮3.0 半夏5.0

適応症

ノイローゼ ヒステリー 更年期障害 神経症 不眠症 妊娠悪阻 血の道 夜啼症、脳血管障害(四肢麻痺、頭痛、顔面神経麻痺) チック 心臓神経症 老人性痴呆 咽頭過敏 など。

図で当てはまる症状が多ければ、効果がでる可能性が高くなります。

鍼灸治療

鍼灸治療

鍼灸の古典医学書の素問霊枢には

怒れば気上り、喜べば気緩み、悲しめば気消え、恐れるは気行かず、驚けば気乱れ、労すれば気減り、思すらば気結ぶ

とあります。

気は精神活動に深く関わっていますので、この流れが不調になれば、内臓や精神の病気を引き起こすとしています。うつ病や不眠も当てはまります。

鍼灸は古くからうつ病や不眠、自律神経失調症に対峙してきました。

ところが、いまだに日本ではうつ病に対する鍼灸治療の効果は知れ渡っていません。一方、欧米では鍼灸を利用するうつ病患者さんが後を絶ちません。

りゅうえい先生

最近NHKで放映されたようにイギリスでは鍼灸治療によるうつ病対策が一般的になっています。

イギリスでの大規模な調査によると、中等度から重症までのうつ病の患者さんで、その69%が抗うつ剤を服用していましたが、12ヶ月後には症状が安定して抗うつ剤の服用が平均で12%減ったとのことです。

また、カウンセリングと鍼灸治療の効果を比較したところ、同等との結果が出ています。専門家は鍼灸治療により幸福ホルモンのオキシトシンの分泌が高まりセロトニンの分泌を促し不安や抑うつを軽減させることでうつ病を回復に向かわせると推測しています。

当然、WHO(世界保健機構)でもうつによる神経症に効果があることを認めています。

「安鍼」は更に効果的

鍼によるうつ治療

安鍼」は左背外側前頭前野(DLPFC)の血流を高め、左脳の機能低下を防ぎ、うつ病を効果的に改善することが期待できる鍼灸治療です。

手足や頭、胴体にある抗うつ、入眠作用のあるツボも利用するので、通常の鍼灸治療より効果が期待できます。

光トポグラフィーによる検査で、脳を活性化させたり鎮静化させたりすることが示唆されています。

活性化させる手技でうつを緩和し、鎮静化する手技で不眠を解消させるからでしょう。

※本ホームページは医師の意見を参考にして制作されました。