「健やか鍼」の臨床報告

症例 H・Kさん 38才 女性

パニック障害 動悸 息切れ、めまい、腰痛

おしゃべりで、しかも大きな声で話す。見た目にはとても不安神経症を患っているとは思えない。ところが、内面は繊細で、色々なことに過敏に反応してしまうのだ。初診時のことは今でも鮮明に覚えている。いつも腰に痛みを感じ、生理の時は更に激しくなる。また、混んだ電車の中に入ると、心臓がドキドキしてきて、居ても立ってもいられない。呼吸をするのもやっとになる。深呼吸を何度か繰り返すうちに楽になり、段々平常に戻ってくるのだが、その後、地震があったかのようなめまいに悩まされるので、安心してはいられない。だから、早朝の電車を利用して通勤したり、混雑しているエレベーターには乗らないようにしたりしているなどと、深刻な話をしていたからだ。また、近所の病院では甲状腺の機能亢進の疑いがあると言われたが、別のクリニックではパニック障害と診断され、どちらが正しいのか、疑心暗鬼になっていた。その後の再検査で甲状腺の病気は否定されたので、パニック障害というのが正確なところだろう。クリックで精神安定剤を処方されるが、どうしても服用したくないので、鍼灸治療で何とかならないかと、切願していた。そこで、活脳鍼を施し、次いで鎮静ツボや足の裏にある動悸や息切れに効果的なツボに鍼灸治療を施したり、腰の坐骨神経根の傍まで届く鍼を刺入したりした。また、発作が起きたら、左手の薬指を握ったり、左手ひらの中央を指圧したりしてみれば、それでも気分が落ち着かなかったら、水をゆっくり飲んでみればと、急場凌ぎのアドバイスも行った。このあたりのツボは交感神経の興奮を鎮める作用があるし、水は精神を安定させる作用があるからだ。再来時、初回の治療を受けた後、デパートの食品売り場にて、パニック状態に陥ったが、これら一連の行動を忠実に行ったら、すぐに鼓動も息も楽になったばかりか、人ごみが気にならなくなり、買い物が続けられたと、喜んでいた。それから、20年近く経過し、現在は主に肩こりや腰痛の治療で1ヶ月に1度の割合で通っている。 去年は、脳梗塞を後遺症による運動障害や軽度認知症の母親を月に2回、休みの日に連れてきたという親孝行な娘だ。