「健やか鍼」の臨床報告

症例 N・Gさん 53歳 男性

うつ病 睡眠障害(早期覚醒)

情報処理関連の会社に勤めていましたが、過当競争による経営難でリストラされてしまいました。やっとのことで食品販売の仕事が決まりましたが、仕事の内容が合わない上、上司の嫌がらせで、次第に鬱々とした日々を送るようになってしまいました。上司の顔を見ると、顔面がピクピクしてきて吐き気を催し、帰宅しても、職場のことを考えると気持ちが沈んでしまいます。床についても、明日になればまた仕事が待っていると思うと、なかなか寝付けず、眠りについても、睡眠が浅くてちょこちょこ目覚めてしまいます。また、性欲も精力も失せ、夫婦生活が完全に途絶えてしまいました。奥さんは、身体を壊したら元も子もないので、すぐに新しい仕事を探した方が良いと心配してくれたのですが、家のローンもあるし、大学生の子供もいる。それに、苦労してやっと決まった職場をそう簡単には辞められません。そこで、職場に行く途中にある心療内科で診てもらうと、うつ病と診断されました。抗うつ剤の他、入眠導入剤を処方され、しばらく服用しましたが、ボーっとして頭の回転が鈍くなったように感じる日が多くなってしましました。そこで、薬に頼らずとも気持ちが楽になり、安眠できる方法はないかと模索した末、ネットでりゅうえい治療院のことを知り、活脳鍼に期待を込めて来院することにしました。

担当者より早期覚醒や途中覚醒がある場合、どうしても長時間作用型の睡眠導入剤が必要と、知り合いの心療内科医から聞いたことがある。薬を飲む場合は、どうしてもメリットとデメリットを計りにかける必要がある。慣れるまで、ボーっとするのは仕方ないことかもしれない。そこで、先ずは活脳鍼を施し、次いで鎮静ツボや強壮ツボにも刺激を与えた。特に活脳鍼のうちでも、鼻の付け根にある印堂(いんどう)というツボは気持ちを明るくする作用に優れている。恐らく、眼神経に刺激が伝わり、脳ばかりか涙腺にも影響を及ぼすことで、副交感神経系が優位になるのであろう。また、三叉神経第2枝や第3枝を刺激する唇鍼は、唾液の分泌を高めるので、興奮を鎮める可能性がある。このような治療を7~8回施すと、5~6時間通して眠れるようになるとともに、冷静に物事をとらえることができるようになり、上司の言葉にも過剰に反応することがなくなった。薬剤も心療内科医と相談の上、短期作用型の精神安定剤だけの服用で済むようになった。