「健やか鍼」の臨床報告

症例 E・Aさん 38歳 女性

不安神経症 過敏性腸症候群(便秘型)

もともと根っからの頑張り屋で、朝早くから会社に出かけ、残業も男顔並みに頑張っていました。責任感が強いので、仕事をやり残すことが出来ません。そんな性格が災いしてか、30歳を過ぎる頃から、不安神経症になってしまい、都内の漢方クリックで処方された漢方薬を飲むようになりました。それでも、仕事が立て込むと、心に余裕がなくなり、期日までにプレゼン資料を作成できるかとか、ちゃんと戸締りをしてきたかとか、友達に言った言葉に失礼はないかなどと、些細なことが気になってしまうようになりました。すると、絶えずお腹が張ったような感じがして、身体が熱くなったり、ひどい首肩のこりや頭痛を感じるようになってしまいました。そこで、母の勧めで貴院を受診することにしました。

担当者より神経質になり過ぎると、消化管の運動が不調となり、絶えず腹部に膨満感を感じたり、大便がウサギの糞のようになったりして、すっきりしなくなる。それどころか、身体が熱くなり、ひどい首肩の凝りや頭痛もあらわれる。実は彼女の母親も同じような性格で、不定愁訴の緩和のため、28年以上も前から当院に通っている。顔は赤ら顔、しきりに咳払いをしている。本人はストレスが溜まると、風邪を引きやすくなるので、風邪症状に違いないと言っていたが、脈を診ると、弦で、しかも浮いて弱い、とても風邪とは思えない。おそらく、赤ら顔は交感神経系の機能亢進が原因の、のぼせ現象だろう。また、咳は咽頭過敏からくるものではないだろうか。古人は、これを梅核気(ばいかくき)と呼んでいる。梅の種が喉に引っかかったように感じ、何度も咳払いをして取り除こうとするが、なかなか取れないとのことだ。漢方クリックで半夏厚朴湯という漢方薬は必ず出されているとのことなので、まず咽頭過敏に間違いない。そこで、活脳鍼の他、至陽や、膈兪、百会、三陰交、足三里、曲泉(きょくせん)、陰谷(いんこく)、大敦(たいとん)、太衝(たいしょう)、行間、厲兌(れいだ)、臂臑(ひじゅ)、商陽(しょうよう)、曲池、陽池(ようち)、気海(きかい)などのツボに鍼灸治療を施した。そして、帰り際に、しばらくの間、最低月に2回は来院することを勧めた。すると、再来時、治療後10日ぐらいは、お腹の張りも軽く、大便の出も良かったし、風邪のような症状も現れなかったと言っていた。その後、1ヶ月に1~2回来院しているが、何とか小康状態を保っている。ただし、なかなか性分は変えられない。完治は難しいので、定期的に治療を受け、不安神経症や過敏性腸症候群、自律神経失調による不快な症状を軽減させることで、毎日の生活を明るくするしかないだろう。